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Carpmaels&Ransford 事務所(イギリス)からのご訪問

  1. Article 123(2)EPCの下の補正

  2. 判例 T2273/10

  3. 判例 T1511/07

  4. 判例 T119/15

  5. まとめ

1. Article 123(2)EPCの下の補正

基本、Article 123(2)EPCの要件を満たすためには、出願当初の明細書等に記載された内容を越えるような補正をしてはならない。

 

補正は、逐語的に明細書によってサポートされていなければならないわけではないが、当業者が、直接的に且つ一義的に当初明細書等から概念的に導き出せるものである必要がある。

 

「組み合わせ」を追加する補正に関しては、以下に紹介する判例等により、「組み合わせ」そのものが当初明細書等中に開示されていない場合は、認められない可能性がある。

 

2以上のリストによる列挙の中から特徴を選択して、新たな「組み合わせ(Combination)」とする場合は、組み合わせそのものが「個別のユニット」として開示されていない以上、“Two lists”の原理に該当する。

 

2. 判例 T2273/10

補正後の請求項1 (青文字は補正により追加された内容、以下同様。)

a composition comprising:

an anionic surfactant

a cross-linked copolymer of methacrylic acid & alkyl acrylate

at least one electrolyte selected from NaCl and KCl

wherein the electrolyte is in an amount of 0.5-3 wt%

and wherein the total amount of surfactant(s) > 5 wt%.

ここで、表面活性剤の量が> 5 wt%であることは、明細書中では「一般的に(generally)」のレベルにおける優先度である。一方、電解質がNaCl and KClであること、及び電解質の量が0.5-3 wt%であることは、明細書中では「Preferred」のレベルにおける優先度である。

 

従って、このような補正は、「Preferred」レベルの特徴2点と、「一般的に(generally)」レベルの特徴1点とを組み合わせたものであるため、単なる3者3様の選択であるとして、認められない。New combinationは認められないとする “two lists” の考え方が適用された。

3. 判例 T1511/07

補正後の請求項1

A metastable calcium complex formed by the interaction of CaOH with a mixture of      lactic and citric acids, wherein the metastable complex is formed by mixing a          suspension of CaOH with a solution of citric acid and lactic acids, wherein:

weight ratio of citric to lactic acid = 1:2 to 2:1

weight ratio of citric acid and lactic acid to CaOH = 2.5:1 to 5:1.

 

ここで、当初明細書等中において、範囲1:2 to 2:1及び範囲2.5:1 to 5:1は各々、最も好ましい範囲として開示されている。このため、優先度の「フェーズ」が揃い、例え新たな組み合わせを導入する補正であっても、Article 123(2)EPCの要件を満たすものであるとみなされる。

 

4. 判例 T119/15

補正後の請求項1

A polymer laminate [for use in a pneumatic tyre] comprising:

a 1st layer made of a styrene-isobutylene-styrene [SIBS] triblock copolymer wherein the molar ratio of isobutylene to styrene is 40/60 to 95/5, and

a 2nd layer containing at least one of:

a styrene-isoprene-styrene [SIS] triblock copolymer wherein the molar ratio of isoprene to styrene is 90/10 to 70/30, and

a styrene-isobutylene [SIB] diblock copolymer wherein the molar ratio of isobutylene to styrene is 90/10 to 65/35.

 

 ここで、範囲40/60 to 95/5、範囲90/10 to 70/30、及び範囲90/10 to 65/35はいずれも当初明細書等中に、優先度の順位を付けることなく開示されたただ唯一の範囲であるため、判例 T1511/07のように、優先度のフェーズを揃える必要はなく、一見、Article 123(2)EPCの要件を満たすようにもみえる。

 

しかしながら、SIBS、SIS、SIBのそれぞれについては、モル比以外の例えば、イソブチレンのモル比、分子量、スチレン含量、重合度の4種のパラメータが開示されており、合計で、12種の数値範囲が存在することになる。

 

また、補正後の請求項1に追記されたモル比各種は、それぞれ異なる技術的効果をもたらすためのものである。即ち、SIBSに係る特定のモル比は、空気浸透耐性を寄与するためのものであり、SIS及びSIBに係るモル比は密着性に寄与するためのものである。

 

このため、上記3種のモル比を組み合わせることは認められない。

5. まとめ

「貯水池に水を貯めるように、明細書中に発明の特徴を単に列挙していくのではなく、後の段階での補正を見据えて、「組み合わせ(Combination)」そのものを複数明記しておく必要があります。その場合、明細書が多少冗長になっても構いません。」(Dr. Cockerton談)

文責:王 稔豊盛

左から2番目

欧州特許弁理士 Dr. Bruce Cockerton氏