秋晴れの気持ちの良い朝に、
新潟県阿賀野市保田の旗野窯さんを訪れました。
弊所と旗野窯さんとのご縁は、「庵地焼」が商標登録された昭和49年からです。
明治11年の創業から140年という老舗です。
今は、旗野麗子さん、聖子さん、佳子さんの3姉妹と、佳子さんの2人のお嬢様が伝統を守り続けていらっしゃいます。
私が物心ついた時には、我が家の食器棚に、八角形の急須と湯飲み(面取茶器)、
丸形のコーヒーカップとソーサーが並んでいました。
幼いながらにも、温かみがあって、
優しい手触りと使い心地が大好きだったことをずっと覚えています。
その器たちが作られている工房に、今回初めて訪れました。
急に伺ったにも関わらず、温かく迎え入れていただきました。
工房は創業以来そのまま何も変わらないとのこと。
麗子さんから、土から粘土を作る場所はここよ、
置き場所はここよ、ここでろくろを回しているのよ、
ろくろは足で回すから、この工房の中で機械の音はしないの。
だから、静かなの、とその工程を丁寧に教えていただきました。
創業以来の建物で、完成を待つ焼き物を置く棚も少し傾いているのに、
これまで台風や地震などで壊れたことはなかったとのこと。
奇跡のようです。
光が差し込む工房に風が吹き抜け、懐かしさと、清々しさとで、
なにか目に見えないものに守られているような、
なんともいえない感動と心地良さを感じました。
先代の旗野義夫さんの、「正直に、まじめに」とのことばを大切に、
三姉妹とご家族が、当時の製法を全く変えずにそのまま守り続けることには
並大抵の努力とご苦労がおありだったことを伺い知ることができました。
これからもこの「庵地焼」が、
多くの人に知られ、愛され続けることを願い、
私も伝えていきたいと思いました。 (S.U.)
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