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インド特許法第8条の外国出願情報の開示制度について



インド特許法独特の制度の一つとして、インド特許法第8条の外国出願情報の開示制度の概要をご紹介致します。


1.概要

インドの特許制度の特徴の1つに外国出願情報の開示制度があります。これはインド特許出願のファミリー案件(実質的に同一の発明でインド以外への特許出願案件)がある場合には、インド特許の付与日までそのファミリー案件の情報をインド特許庁に提出する必要があるという制度です。


つまりインド出願ではインド特許法第8条(1)に基づき、インドでの出願日から特許付与日まで当該インド出願の全てのファミリー案件(無審査の国や法域の案件も含む)に関する明細事項を、インド特許庁長官に対し随時報告しなければなりません。この明細事項の中にはファミリー案件の出願日、出願番号、公開日、公開番号、特許付与日、特許番号、国名、及び「出願の状況(現状)」が含まれます。


特に注意を要するのが「出願の状況(現状)」という項目であり、例えばファミリー案件で拒絶理由通知や特許査定を受けた際に、その旨をインド特許庁長官に報告しないでインド特許出願の特許付与日が来てしまうと異議理由及び無効理由になるおそれがあります。


この様に、インド特許法第8条に定める外国での審査状況の報告と先行技術文献の提出は実質的に義務であり、公開公報及び特許公報の番号及び発行日、特許査定日等の事項の他、審査待ちなのか、特許査定又は拒絶査定確定なのか、放棄/取下なのか、等について変動があるたびに逐一報告する必要があることになります。そして特許庁長官は、インド特許法第8条(2)に基づき、インド特許の付与又は特許付与拒絶までファミリー案件の処理状況について情報(拒絶理由の内容など)を開示する様に求めることができます。ちなみにインド特許のオフィス・アクションに定型記載があるので、実質的にはファミリー案件で何らかのアクション(拒絶理由や特許査定など)があった場合は常に要求されると思った方が良いようです。


これらの外国出願情報の開示制度があるからこそ、「インド特許法では最初の拒絶理由の通知から一年以内に当該特許出願を特許可能な状態にしなければならない」(規則24条B(4))という、英国特許法のいわゆる「acceptance due date」に準じた、インド特許法独特の制度が機能致します。尚、インド特許法第8条の外国出願情報の開示を怠ると、異議理由及び無効理由になる虞があって特許取得後に権利行使の障害となり得ますが、米国のIDSの様に法律で罰せられる等の直接的なペナルティの規定がある訳ではありません。


2.提出期限

  • ファミリー案件を出願した場合、インド出願してから6ヶ月以内(第8条(1a))

  • 当該ファミリー案件に何らかのアクションがあってから6ヶ月以内(第8条(1b))

  • 長官からの提出要求通知の日から6ヶ月以内(第8条(2))

※これらの情報を提出しない、あるいは隠す、または誤った情報・書類をインド特許庁に提出した場合はインド特許法第64条(1)に基づく特許の取消理由に該当することから、第三者/出願人の競合者が特許付与前異議申立(インド特許法第25条(1))を行うことにより、特許が付与されるリスクに対する対応手段として利用される可能性があります。

また提出期限を過ぎても、所定の料金を納付すれば手続上のいかなる不備も是正する為の上申を行うことができます。(インド特許規則137)

<参考文献>


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