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Khurana & Khurana事務所からのご訪問

 2022年7月7日に、Khurana & Khurana事務所(インド)のMr. Tarun Khuranaが来所されました。その際、インドにおける特許実務について、以下のような事項を共有して下さいました。

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後列右から2人目がMr. Tarun Khurana

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セミナー風景

1. AI関連発明の審査について

 機械学習装置や方法の進歩性に関しては、発明が技術上の課題を解決するもの(例えば、信号の遅延の改善)であれば認められやすい傾向にあります。それとともに、課題を解決できるだけの具体的な手段の開示も求められています。

 一方、ビジネス上の問題、ユーザー側の問題はいわゆる「技術上の」課題ではないものとして扱われます。

 また、アルゴリズムの開示については、記載要件として要求される開示の度合いは発明によって異なりますが、新規性要件を満たす為に必要である場合、開示する分には差し支えありません。

2. アクセプタンス期間の経過について

 First Examination Report:FERに対する応答を提出し、アクセプタンス期間が経過したのにもかかわらず、審査官からのアクションがない場合があります。これは、担当審査官の抱えている案件の数にもよりますが、未だにFERに対する応答を審査できていない可能性が高いと思われます。

 アクセプタンス期間が経過したからといって、直ちに「その特許出願が放棄されたものとみなされた」わけではありません。アクセプタンス期間は、あくまで「出願人サイド」が出願を特許付与可能な状態にする努力を行なうための期間であって、その期間内にFERに対する応答が済んでいれば十分であると考えられます。

 この場合の打開策として、インド現地の代理人に「審査官宛の催促メール」(審査記録に残る)を代筆してもらうことで、審査の迅速化を図ることが可能です。ただし、このような催促メールは審査のスピードアップを確約するものではありません。

3. 商標登録までに要する期間

 インドに直接商標登録出願をした場合、(1)拒絶理由がない場合は、出願から6~12ヶ月程度で登録され、(2)拒絶理由がある場合は、出願から12~15ヶ月で登録され、(3)第三者からの異議申立があった場合は、登録に3~4年を要する場合もあります。
 また、アーメダバード、デリー、コルカタ、ムンバイ、チェンナイにある登録局間で、登録までに要する期間に大差はなく、各登録局の審査官に対して、ソフトウェアで自動的に審査対象である出願が公平性をもって振り分けられます。


4. 4つの特許庁について

 デリー、コルカタ、ムンバイ、チェンナイにある特許庁によって機械、電気等の技術分野で審査や特許査定率に差はありません。
 かつては、例えば、ムンバイの特許庁に出願した場合は、ムンバイの特許庁に所属する審査官が審査していました。今では、ソフトウェアで自動的に担当案件が振り分けられるので、ムンバイの特許庁に出願した場合であっても、全く異なる特許庁の審査官に振り分けられることもあります。また分野にかかわらず、公平性が出るように配慮もなされています。このため、実質的にフォーラム・ショッピングのメリットはなくなりました。


5. インド特許法第8条と実体審査について

 インド特許法第8条(Section 8)に基づき出願人は所定の書式(Form 3)に従って対応外国出願の情報をインド特許庁に提出します。対応外国出願の審査状況がインド特許出願の審査に与える影響度は、審査官によって異なります。対応外国出願の審査状況を逐一参酌する審査官がいる一方で、全く参酌しない審査官もいます。
 対応外国出願で特許査定が出ている国を確認した上で、FERへの応答書を審査しているか否かという問題に関しても、審査官によって異なります。ただ、例えば、拒絶理由を通知する場合のburden of proof(立証責任)は大きいので、例えば、US等の主要国の特許庁で特許が取得できていれば、9/10でインドでも特許査定となります。

 


6. Form 3の更新について

 Form 3(Section 8 (1) (a)の陳述後)は、インド出願後、外国で「新たな出願」がされた場合に更新すべきもので、6ヶ月ごとに更新しなければならないものではありません。即ち、インド出願「後」に、外国で出願がなされた場合、当該外国出願から6ヶ月以内に、①当該外国出願の情報を提供することで、Form 3を更新しなければならず、且つ②既にForm 3に記載した外国出願の情報を更新することができます。
 ここで留意すべき点として、対応する外国にUSが含まれている場合は、USにおける一部継続出願(CIP)や分割出願等もそれぞれ「新たな出願」としてみなされます。


 

筆:弁理士 王 稔豊盛
 

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