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Carpmaels & Ransford事務所(英国)からのご訪問

2023年10月24日、英国のCarpmaels & Ransford事務所からBruce Cockerton氏が来所され、「EUにおける機能性食品の取り扱い」について解説していただきました。

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欧州における機能性食品の取り扱い及びクレーム作成

 2021年の欧州における機能性食品の市場規模は300億ユーロ(≒4兆8千億円)にも上る。UKが機能性加工食品の最大市場を擁する一方、ドイツは機能性飲料の最大市場を擁する。

欧州では、「機能性食品」の明確な定義はなく、一般的に健康増進を目的としたもの、及び疾患のリスク低減を目的としたものとされているが、「食品(飲料)」という形を留めていなければならず、通常摂取し得る量で所望の効果が発現できるものでなければならない。

 機能性食品のラベルに載せる文言は大きく、「nutrition claim」 と「health claim」との2種類に分けられる(注:ここでいうclaimは、ラベルに載せる文言程度の意味で、特許出願の「請求項」を指すものではない)。前者の「nutrition claim」は、該当食品が有益な栄養特性を有することを明記し、又は示唆するように記載する。後者の「health claim」は、該当食品と健康との間の関係を明記し、又は示唆するように記載する。「health claim」の下位概念として、「reduction of disease risk claim」がある。「reduction of disease risk claim」は、該当食品等の摂取が疾病の進行に関するリスク因子を顕著に低減させることを明記し、又は示唆するように記載する。それでも、該当食品又はその成分が疾病と「直接な関係」を有すると記載してはならない。例えば、「植物ステロールは血中コレステロールを低減させることが知られている。高コレステロールは、冠動脈心疾患のリスク因子である。」というようにワンクッションを置いた表現を用いることが求められる。

 出願する機能性食品組成物が新規なものである場合は、機能性食品そのものを組成物クレームとすることができる。ここで、「Composition X for reducing blood cholesterol, said composition comprising…」という請求項における「for」 は単に「suitable for」 程度の限定としてしか解釈されず、同様に「reducing blood cholesterol」という機能を有することを暗に示唆している先行技術までも引例として引かれる。

 出願する機能性食品組成物そのものが新規なものではないが、その機能が新規なものである場合は、「use claim」(用途クレーム)を用いる。「use claim」は「second medical use claim」と「non-medical use claim」とに大別される。「second medical use claim」における「用途」は、特定の疾病を治す治癒目的のものでなければならない(例:Substance of composition X for use in the treatment of Y)。一方、「non-medical use」は、その「用途」が特定の疾病を治す治癒目的でない場合に用いられる(例:Use of composition X for achieving technical effect Y)。


「具体例」
(i) Composition X for treating or preventing obesity (second medical use claim)
(ii) Use of composition X for increasing lean body mass, reducing fat mass or decreasing fat mass relative to total body weight (non-medical use claim)
(iii) A nutritional composition X for increasing lean body mass, reducing fat mass or decreasing fat mass relative to total body weight (non-medical use claim)
(ii)及び(iii)は、機能性食品のクレームとして適切であるのみならず、商品のラベルに載せる文言としても許される。

以上
 

筆:弁理士 王 稔豊盛

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