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KAN AND KRISHME(インド)事務所からのご訪問

インド実務の近況

 

◆8条(1)について

従来通り、関連する諸外国出願の明細事項(国、出願日、出願番号、出願の現状、公開日、登録日等)の提出を求められる。

 

◆8条(2)について

関連する諸外国出願の「詳細」は、審査官から求められた場合にのみ提出すればよい。

 

 従来通り、当該「詳細」には各国における拒絶理由通知及び許可クレーム等が含まれるが、英訳を要する場合は、完全なる逐語訳でなくてもよい。ここで、審査官は特定の国の書類の提出を求めることもある。

 

 インド特許庁(以下、IPO)は、WIPO CASE (Centralized Access to Search and Examination) に加入したため、審査官は自ら諸外国出願の「詳細」を閲覧することができるようになった。そのため、上記のように、8条(2)に係る要件が緩和された。

 

 

◆優先審査制度について

 優先審査制度適用の対象は、新規事業、又はIPOを国際調査機関若しくは国際予備審査機関として選定した出願人である。ここで、新規事業に該当するためには、以下のような要件を満たさなければならない。

 

(1) 会社登記から5年以上を経過していない

(2) 上記5年の内のいずれの年度においても、売上高が3.8 million (USD) (約4億円)を超過していない

(3) 業務内容が技術革新等に係るものである

 

 ここで、組織の合併、分裂、再編による新規事業は、上記の新規事業とは認められない。

 

◆優先審査制度の実例について

<最短記録113日で特許査定>

出願人: Optimus Drugs (インド南部を拠点とする製薬会社)

 

<特許査定までの流れ>

当初は通常の審査請求をしたものの、途中から優先審査制度を適用

実体審査完了

最初の審査報告書 (以下、FER) の発行 (実質、優先審査制度を適用した審査請求から10日以内)

上記FERに対する応答

ヒヤリングの執行 (FERに対する応答から1月以内)

ヒヤリング後の書面提出

特許査定 (上記ヒヤリング後の書面提出から10日以内)

 

◆実施報告書(Form 27)の要件について

 

 従来、特許発明をインド国内で実施していない場合は、実施報告書の[ ] Not Worked の欄にチェックを入れ、単純な不実施理由を繰り返し記載するだけでよかった。

 

 (例) インド国内での販売業者、代理店を探しているため、実施に至っておりません。

 

 2018年11月からは、実施報告書に記載する不実施理由の要件が厳しくなる見込みである。

 

例えば、「販売業者、代理店を探しているから、実施できていない」というような理由を繰り返し記載した場合、IPOからは「何年も経っているのに、未だに見つからないのか」、「本当にインド国内で実施する意図はあるのか」といったような指摘を受けることが予想される。

 

 加えて、「輸入」行為も実施行為の内の一種であるから、「せめて、日本で製造した特許発明品をインド国内に輸入することもできないのか」といったような指摘を受けることも考えられる。

 

 従って、今後の実施報告書における不実施理由の記載の仕方については、インド現地の代理人と十分に意思疎通を図った上で、最も適切な不実施理由を挙げなければならない。

 

◆その他

IPOでは、現状として、6-8年分もの未審査案件があるため、130名いた審査官の数を458名まで増員した。その内の大多数は20代、30代のITツールを駆使して仕事することに長けている審査官である。

 

IPOは、ムンバイ、ニューデリー、チェンナイ、カルカッタの4カ所に特許庁を擁しているが、出願案件がコンピューターで自動的に振り分けられるようになったため、特定の庁を選択することができなくなった。

 

 ペーパーレス化を図るIPOは、FER等の通知を電子メールでのみならず、SMSや専用のスマホアプリを通じて、代理人に発信している。

 

 各々の事務所では、弁理士の数に対して、毎月受けるFERの数の方が圧倒的に多く、効率よく捌ききれていないのが現状である。例えば、弁理士の在籍数がわずか19名の事務所では、毎月一人の弁理士につき38件ものFERを処理することもある。

​筆:王 稔豊盛 

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