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北京パナウェル事務所からのご訪問

中国実務の近況

 

1.マーカッシュ形式クレームの取り扱い

2.誤記訂正の要否

 

1.マーカッシュ形式クレームの取り扱い

(従来)

 従来より、マーカッシュ形式クレームの訂正に関しては、以下のような二通りの考え方が混在していた。

 

(1)マーカッシュ形式クレームに係る発明は全体として一つの技術方案であるため、並列列挙した選択肢を部分的に削除することは認められない。

 

(2)マーカッシュ形式クレームで並列列挙されている選択肢はその各々が技術方案を構成するものであるため、選択肢ごとの削除は認められる。

 

(経緯)

 万生薬業有限責任公司が、進歩性欠如を無効理由として、第一三共株式会社の有する特許「高血圧症の治療又は予防に用いる薬物組成物の製造方法」(97126347.7号)ついて請求した無効審判において、被請求人は以下のような訂正の請求をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 上記訂正を受け、特許審判委員会は上記(1)の考え方に基づき、請求項1の「若しくはエステル」を削除する訂正のみを認め、無効審決をなした。

 

 第一審人民法院(北京市第一中級人民法院)も同様に、上記(1)の考え方に基づき、特許審判委員会の訂正基準を支持した。

 

 第二審人民法院(北京市高級人民法院)は、上記(2)の考え方に基づき、被請求人による訂正は、権利範囲を減縮するものであると同時に、公衆の利益を害するものではないため、認められるべきとの見解を示した。

 

(2016)最高人民法院(最高法行再41号判決)では、「並列列挙した選択肢の削除により保護範囲が減縮され、公衆の利益を害することとならない場合でも、新たな権利の保護範囲が生じる場合は、同訂正を認めることはできない」との見解を示した。

 

 「自発補正段階」、「審査係属中」、「権利化後」の順に、マーカッシュ形式クレームについての補正又は訂正の要件が厳しくなる。

 

 マーカッシュ形式クレームを極力用いず、サブクレームを複数設けることで、広い保護範囲を確保する手法もある。

 

2.誤記訂正の要否

 

 審査段階においては、出願人は基本的に、審査官から指摘された事項以外の事項については補正をすることができない。

 

 従って、例えば、明細書中の一箇所のみのタイプミス等の誤記については、権利行使の妨げとなることもないので、実務上は訂正等をせずにそのままにしておくことが多い。

 

 しかしながら、現在の実務上、電話インタビューの際に、審査官に直接了承を得ることで、拒絶理由に係る事項でない軽微なミスについても補正をすることができる場合がある。

​筆:王 稔豊盛 

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