top of page

UNITALEN事務所(中国)からのご訪問

2023年11月28日、中国のUNITALEN事務所から弁護士の何英韜 氏、魏煒 氏が来所され、「中国における商標登録出願の動向等について」について解説していただきました。

UNITALEN事務所様(2023.11.28).JPEG

1. 中国における商標実務の動向
2. 悪意のある商標登録出願
3. 登録商標の使用義務
4. 審判例・判例から見える傾向
5. その他

1. 中国における商標実務の動向

中国における商標登録出願件数や登録件数はここ数年減少傾向にある。その一因として、審査基準が厳しくなったこと等が挙げられる。それでも、人口が多いため、2023年の1月から10月までの期間における出願件数は587.7万件、登録件数は352.5万件である。

 その一方で、商標登録出願の官庁費用は1,000元(約2万円)から270元(約5,600円)に減額され、審査期間も3ヶ月に短縮された。また、商標局の公式サイトで、審決や異議決定に係る書類が公開されるようになり、登録証も電子登録証のみが発行されるようになった。さらに、(抵触する商標権の商標権者等の)同意書による拒絶理由の克服も認められるようになり、烈士の氏名を含む商標については検索可能なリストが閲覧できるようになった(烈士:人名救助等で命を落とした一般の人(例えば、パンデミック期間中に命を落とした医療従事者))。
 

2. 悪意のある商標登録出願

 中国商標法第4条では、「使用を目的としない悪意のある商標登録出願は拒絶されなければならない」と規定されている。

 ここで、使用を目的としない悪意のある商標登録出願とは、使用する意図がなく、正常な経営に必要な量を超えて大量にされた出願で、商標資源を不正に占用し、商標登録の秩序を乱す出願をいう。

 例外として、防護目的で同一又は類似の商標について出願すること、及び将来の業務のために適度な件数の出願をすることは認められる。

 

3. 登録商標の使用義務

 商標登録の日から5年ごとに、過去12ヶ月の間における登録商標の使用状況を当局に説明しなければならない。説明を怠った場合は、同登録商標は抹消され、説明の内容が不十分な場合は当局から証拠の提示を求められる等抜き打ち検査を受ける場合もある。その際、取引があったこと(商標が実際に使用されたこと)を証明するために、「契約書」や「領収書」の提示が最も有効である。

4. 審判例・判例から見える傾向

 中国における商標登録出願の審査等においては、外観→称呼→観念の優先度で商標の類似を判断する。「外観」が最も重要視される要素で、例えば出願商標が「TAYRON」で、引用商標が「TYRON」とある場合、その「称呼」よりも、英文字の「A」があるか否かで「外観」がより重要視される。この場合、「称呼」の類似性よりも、まず先に「外観」が類似していると判断されて、商標全体として類似であるとみなされる。

 出願商標に「Mikado」という言葉が含まれている場合、「Mikado」は「日本の天皇」を想起させる表現なので登録が認められなかった例もある。ただ、この「Mikado」という言葉の意味自体がどれ程中国国内の一般需要者の間で浸透しているのかについては疑義が生じる部分もあるが、当局が判断する上でインターネット上の情報も大いに参酌する傾向にある。一方、「TECNO PHANTOM」という商標に関しては、「PHANTOM」という言葉は中国国内の一般需要者に馴染みのないものであるとして、引用商標の「幻影」と類似せず、混同を惹起しないと認められた例もある。

 「THE FINEST TEAS OF THE WORLD」のような文言を含む商標は無効の対象となる。このような文言は「誇大広告」とみなされるからである。登録が無効になった後で同商標を使用し続けた場合は、行政処罰の対象となる。この例では、795972元(約1,665万円)の過料の支払いを命じられた。

 

5. その他

 処理水問題で、日本から中国への水産物等の輸出が当面の間停止されているが、このような「輸入の停止」は不使用取消審判等における「不使用の正当理由」として認められる。

以上
 

筆:弁理士 王 稔豊盛

bottom of page